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あかしあ

僕は辿り着けない。いつまでも夕暮れの中にいる。彼がどうにかなったというのだけれど、僕はこの目で見ていない。コロシアムで何があったかなんて僕は知らない。ならいっそ早く夜になってくれ。そうすればきっとまた日も昇るんだろう。そうしたらまたひょっこり彼はあらわれるから、一緒にどこかに出かけたり、うっかりして甘いお茶なんか飲んだり、夏はどう過ごそうかなんて話したりしよう。きっと身体も冷えているから、うんと熱いお湯をバスタブに張ろう。もう何も心配することなんかないよと、彼に伝えよう。どうしても僕は怖かった。うしなうこと。片羽根をもぎとられたような無理なひしゃぎ。彼を知る前の僕に戻ること。信じられないことに、以前の僕は彼のいない世界で暮らしていた。そして今もそうだ。前と今は同じなのに。早めの春、あの日、引かれた暴力的な線。空が隔てられる。太陽を透かすアカシア。まだそんなに日は経ってないのに、彼はラインを越えてどこへ行ったろう。歩く花にでもなったつもりかい?




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